建設業許可の審査において、最も重大な違反のひとつが虚偽申請です。 虚偽申請は「欠格要件」に該当し、許可取得ができないだけでなく、許可取得後に発覚した場合は即時の許可取消処分となる極めて重い違反です。
また、虚偽申請の内容によっては刑事罰の対象となることもあり、企業の信用を一瞬で失う結果になりかねません。
本記事では、虚偽申請とは何か、どのような行為が虚偽に当たるのか、実際の処分例、発覚の仕組み、意図しない虚偽を防ぐ方法などを、実務レベルで詳しく解説します。
虚偽申請とは?
虚偽申請とは、建設業許可の申請において、事実と異なる内容を記載したり、偽造・改ざんした書類を提出する行為のことです。
建設業法第28条に基づき、虚偽申請は許可取消の対象と明確に定められています。
虚偽申請に該当する具体的なケース
① 専任技術者・経営業務管理責任者の「名義貸し」
実態として勤務していないのに、書類上だけ在籍しているように見せる行為。
② 実務経験年数の水増し
10年に満たないのに10年以上あるように書類を作成するケース。
③ 決算書・財務情報の改ざん
純資産や売上の数値を偽装する行為。
④ 役員の経歴や欠格要件の事実を隠す
禁錮刑歴・許可取消歴を故意に申告しないなど。
⑤ 工事経歴書の偽装
実際には施工していない工事を記載するなど。
⑥ 実態のない本店所在地の届け出
郵便受けだけの住所やバーチャルオフィスのみの届け出は虚偽と判断される場合があります。
⑦ 社会保険加入状況の偽装
未加入なのに加入していると申請すること。
⑧ 印鑑証明書や契約書などの偽造
これは完全に刑事事件となります。
虚偽申請が発覚した場合のリスク
虚偽が発覚した場合の影響は非常に大きく、次のような処分が行われます。
① 許可の不許可・取消処分
虚偽申請は即不許可、または許可取消となります。
② 5年間の欠格期間
虚偽申請を行った本人は5年間、建設業許可を申請できません。
③ 罰金刑などの刑事処分
悪質な場合は罰金刑・刑事事件として扱われます。
④ 金融機関からの信用失墜
融資や取引に大きな影響が出ます。
⑤ 元請や取引先からの契約解除
建設業界は信用が命のため、取引停止が起こりやすい。
⑥ 公共工事への参加不可
自治体との取引は不可能になります。
虚偽申請は企業の存続を揺るがす重大な違反です。
虚偽申請はどうやって発覚するのか?
虚偽は次のような場面で発覚します。
① 行政の実態調査
自治体が現地調査に来るケースもあります。
② 元請からの情報提供
名義貸しなどは関係者からの通報で発覚することが多い。
③ 警察・税務署との情報連携
暴力団関係や財務問題は連携情報で判明。
④ 労働保険・社会保険データの照合
専技や従業員の加入状況から虚偽が発覚。
⑤ 元社員や関係者の内部告発
過去の社員が申告するケースも珍しくありません。
虚偽は見逃されることはなく、必ずどこかで判明すると考えるべきです。
悪意のない「結果的な虚偽」も注意が必要
故意でなくても、次のようなミスが虚偽扱いになることがあります。
① 書類の記載漏れや誤記
特に住所・氏名が一致していないケース。
② 経歴書の記載ミス
期間が1ヶ月ずれているだけでも調査対象に。
③ 経管の常勤性を示す資料不足
「実態不明」とされ虚偽と判断される場合も。
④ 専技の勤務先が別会社のままのケース
雇用契約の切替の遅れでも虚偽扱いになる可能性がある。
虚偽申請を防ぐための実務ポイント
① 書類は100%整合性を取る
住所・氏名・役職・履歴など。
② 経管・専技の実態を明確に
給与・勤怠・社会保険を整理しておく。
③ 不明点は事前に自治体へ相談
疑問点を放置すると虚偽扱いになることがあります。
④ 税理士・行政書士のチェックを受ける
専門家が確認すればリスクは大幅に減少します。
⑤ 書類の改ざん・加工は絶対禁止
少しの改変でも刑事事件になる可能性があります。
まとめ:虚偽申請は“許可取消”につながる最も重大な違反
虚偽申請は建設業許可制度の中で最も重い違反行為です。 発覚すれば許可取消、欠格期間5年、社会的信用の失墜など、企業に致命的な影響を与えます。
虚偽申請を避けるために重要なのは、次のポイントです。
- 書類の整合性を徹底する
- 実態と申請内容を正確に一致させる
- 不明点は必ず自治体へ確認する
- 名義貸しなどの不正行為は絶対に行わない
正しい申請と誠実な運営が、許可取得・維持の最も重要な要素です。


