造園工事業とは、公園・庭園・緑地・街路樹・屋上緑化など、人と自然が共存する環境をつくる工事を担当する専門業種です。植栽、剪定(せんてい)、地形づくり、石組み、芝張り、池の施工、景観設計など幅広い技術を組み合わせ、快適で美しい空間をつくり出します。
造園工事は単なる「庭づくり」ではなく、防災・環境保全・都市景観・快適性向上に貢献する重要なインフラ整備の一部であり、街づくりと密接に関係する工種です。
造園工事業が担当する主な工事
造園工事は自然を扱うため、土木・建築・園芸の要素が複合した高度な専門性が求められます。扱う工事は以下の通りです。
- 公園整備工事:都市公園・広場・遊歩道の施工
- 植栽工事:樹木や草花、芝生の植え付け・移植
- 剪定・伐採工事:樹木の形を整え、健康維持や景観改善
- 外構・庭園工事:住宅の庭づくり、石組み、塀やアプローチ
- 屋上・壁面緑化工事:都市環境の温熱改善に貢献
- 緑地維持管理:草刈り、樹木の手入れ、病害虫対策
- ビオトープ施工:自然環境再生を目的とした池・湿地の造成
造園工事の魅力は、構造物とは異なり「時間とともに成長する景観」をつくる点にあります。
造園工事の工程(流れ)
造園工事は、設計から施工、維持管理まで一貫して行われることが特徴です。
① 造園計画・設計
敷地条件・日当たり・排水・利用目的を踏まえ、植栽配置や動線計画を行います。
② 土工事・地形づくり
盛土・掘削・整地など、植物が生育しやすい地盤づくりを行う工程です。
③ 構造物の施工
園路、石組み、池、ウッドデッキ、フェンスなど外構部分を整備します。
④ 植栽工事
樹木・低木・芝生などを植え、季節や成長を楽しめる景観を形成します。
⑤ 維持管理
剪定・施肥・病害虫防除など、植物を健全に保つための重要な工程です。
造園工事は「つくって終わり」ではなく、継続的な管理によって価値が高まる工事とも言えます。
建設業の中での「造園工事業」の位置づけ
造園工事業は、建設業29業種の中で唯一「緑を扱う」工種です。土木・建築の外構部分に関連し、景観形成や環境改善に貢献します。
- 都市計画:公園整備や街路樹管理で都市の価値向上
- 環境保全:緑化によるCO₂削減・ヒートアイランド対策
- 防災:樹林帯や緑地帯の整備で避難環境を改善
「街の快適性」「景観」「環境」「防災」すべてに関わる、多角的な役割を持つ業種です。
必要な資格と専門性
植物・土壌・景観・施工管理と幅広い知識が求められるため、取得できる資格も多岐にわたります。
- 1級・2級造園施工管理技士
- 樹木医:樹木の診断・治療を行う専門資格
- 造園技能士:植栽・剪定の高度技能を証明
- 土木施工管理技士:外構工事で活躍
- ビオトープ管理士:自然環境保全に関する資格
造園は科学と芸術の両面を持つ工事であり、経験と美的感覚が評価される世界です。
よくある誤解:「造園=庭師」とは限らない
造園工事業は庭づくりだけではありません。公共工事や都市のインフラ整備に深く関わります。
- 大型公園の施工・管理
- 高速道路沿いの緑地維持
- 企業・商業施設の景観設計
- 河川敷や斜面の緑化工事
「緑のインフラ」をつくる重要な工事であり、庭師とは業務範囲が大きく異なります。
まとめ:自然と都市をつなぐ“景観と環境の専門職”
造園工事業は、公園や庭園、緑地、外構など、都市と自然をつなぐ空間づくりを担う重要な工事です。植栽・剪定・地形づくり・景観設計など多くの技術を組み合わせ、街の環境と美しさを支えています。
環境配慮が求められる現代社会において、造園工事業の役割は今後ますます大きくなっていくでしょう。


