土木一式工事とは、道路・橋梁・造成・河川工事など、複数の専門工事を総合的に取りまとめて行う“総合土木工事”を指します。大規模な公共工事だけでなく、宅地造成やインフラ関連工事など、多くの現場で関わる建設業の中心的な業種です。
土木工事は専門性が高く、幅広い工種の調整・安全管理・工程管理が求められます。本記事では、土木一式工事でできる工事・できない工事、専門工事との違い、許可の取り方、よくある誤解などをわかりやすく解説します。
土木一式工事とは
土木一式工事とは、道路・橋・河川・造成など“土木構造物”を完成させるために必要な複数の工事を総合的に請け負う工事です。工事の規模が大きく、複雑な施工計画や多くの専門職種の調整が必要な工事に適用されます。
建築物を対象とする「建築一式」と異なり、土木一式はインフラ整備や土地造成を担う工種で、地域社会を支える重要な業種です。
土木一式工事でできる工事
土木一式工事業者が行える工事は次のとおりです。
- 道路工事(舗装・改良工事を含む)
- 橋梁の新設・補修
- トンネル工事
- 上下水道工事
- 造成工事(宅地造成・開発造成)
- 河川工事(護岸・堤防)
- 砂防ダム・治山工事
- 公園整備工事
- 区画整理・造成に関わる基盤整備工事
大規模・複合的な工事が中心で、「専門工事を取りまとめる立場」が特徴です。
土木一式工事と専門工事の違い
土木一式工事と、専門工事(とび・土工工事、舗装工事、管工事など)は明確に役割が異なります。
① 一式工事=まとめる工事(プロジェクト全体の管理)
複数の専門工事を総合し、工事全体を完成させる役割を担います。
② 専門工事=部分工事
例えば:
- 造成・掘削 → とび・土工・コンクリート工事
- 道路舗装 → 舗装工事
- 水道管の敷設 → 管工事
土木一式工事業者はこれらの「部分工事」を取りまとめて総合的に工事を遂行します。
土木一式工事でできない工事
誤解されがちですが、土木一式の許可を持っていても以下の工事は単独では行えません。
- 建築物の新築(→ 建築一式工事)
- 専門工事の単独施工(例:舗装工事だけ請け負う)
- 電気工事・管工事など設備工事の施工
一式許可は万能ではなく、あくまで“総合的にまとめる工事”を請け負うための許可です。
造成工事は土木一式の範囲?
造成工事は「土木一式」に含まれるケースが多いですが、規模・内容によっては「とび・土工」でも施工できます。
一般的な判断基準は以下のとおりです。
- 大規模造成(宅地開発・切土・盛土・擁壁) → 土木一式
- 小規模造成(庭の整地・軽微な土地整形) → とび・土工
よく似ている工事ですが、規模と複合性で区分されます。
土木一式工事業の建設業許可
土木一式工事を行うには、請負金額が500万円(税込)以上の場合、建設業許可が必要です。
許可要件
- 経営業務管理責任者(経管)がいること
- 専任技術者(専技)がいること
- 500万円以上の自己資金などの財産的基礎
- 誠実性(法令違反がないこと)
専任技術者の資格
- 1級土木施工管理技士
- 2級土木施工管理技士(土木)
- 技術士(建設部門)
- 10年以上の土木工事の実務経験
施工管理技士の「土木」区分が最も代表的な資格です。
土木一式工事の現場例
- 宅地造成工事
- 道路の新設・改良
- 橋梁工事
- 排水路・河川工事
- 上下水道整備
- 山留め工事・切盛土工事
- 公共インフラ工事全般
地域社会の基盤をつくる工事が多く、非常に需要の大きい分野です。
よくある誤解と注意点
誤解①:土木一式の許可があれば舗装工事も単独でできる?
できません。舗装工事を単独で請け負うには、舗装工事業の許可が必要です。
誤解②:造成工事はすべて土木一式?
小規模造成は「とび・土工」でも可能です。
誤解③:土木一式=大規模工事だけ?
規模が大きい傾向はありますが、複合工事なら中規模でも一式扱いになります。
まとめ:インフラを支える総合工事業の要
土木一式工事業とは、道路・造成・河川など複数工種を総合的にまとめる“総合土木工事”を担う専門業種です。専門工事との違い、造成工事との関係、許可が必要なケースを理解することで、事業の方向性や許可取得の判断が明確になります。
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