解体工事業とは、建築物・工作物を安全に取り壊す工事を行う専門業種です。老朽化した建物の撤去や建て替え時の解体、敷地の再利用に向けた整地など、建設の始まりに欠かせない重要な工事です。
本記事では、解体工事業で「できる工事」「できない工事」「必要な建設業許可」「よくある誤解」などをわかりやすく整理します。
解体工事業とは
解体工事業とは、木造・鉄骨造(S造)・鉄筋コンクリート造(RC造)など、あらゆる建築物を取り壊す工事を行う業種です。2016年に建設業法が改正され、それ以前は「とび・土工工事」の一部として扱われていましたが、現在は独立した業種として分類されています。
解体工事は、建設工事の出発点ともいえる重要な工程であり、周囲への安全配慮、粉じん・騒音・振動への対策、廃棄物の適正処理など多くの専門性が求められます。
解体工事業でできる工事
解体工事業では、次のような工事を行うことができます。
- 建築物の取り壊し(木造・S造・RC造など、構造を問わず)
- 建物付帯設備の撤去工事
- 内装解体(スケルトン工事など)
- 外構・ブロック塀などの解体
- 小規模構造物(物置、カーポートなど)の撤去
- 解体後の整地・処分
鉄骨造・RC造の解体は特に専門性が高く、重機オペレーションや仮設計画、安全管理の高度な知識が必要になります。
解体工事業でできない工事
一方、解体工事業だけでは対応できない工事もあります。
- 建物の新築工事(→ 建築一式工事)
- 造成工事(土地の大規模な整形 → 土木一式工事 or とび・土工工事)
- 産業廃棄物収集運搬(別途許可が必要)
- アスベスト除去工事(専門資格・届出が必要)
特に誤解が多いのが「解体したら廃棄物運搬もできるのでは?」という点ですが、これは別の許可(産廃収集運搬)が必要です。
解体工事業に必要な建設業許可
解体工事を請け負う場合、次の金額基準で建設業許可が必要です。
- 500万円(税込)以上の工事 → 許可が必須
- 499万円以下 → 許可なしでも可能(ただし元請は許可業者を希望するケースが多い)
解体工事業として許可を取得するためには、次の要件を満たす必要があります。
- 経営経験のある経営業務管理責任者(経管)がいること
- 解体工事に関する専任技術者(専技)がいること
- 500万円以上の自己資金などの財産的基礎
- 法令違反がないこと
専任技術者の資格要件は、施工管理技士(とび・土工、土木、建築など)または一定年数の実務経験が必要です。
解体工事の現場で重要になるポイント
- 事前調査(構造、アスベストの有無、搬入経路など)
- 安全管理(倒壊リスク、重機作業、近隣対策)
- 騒音・振動対策
- 粉じん防止措置(散水など)
- 廃棄物の分別・処理
特に近年はアスベスト(石綿)対策の厳格化により、事前調査と届出が必須となっています。
よくある誤解と注意点
誤解①:解体工事業があれば廃材の処分までできる?
できません。廃棄物を運搬するには、都道府県の「産業廃棄物収集運搬許可」が別途必要です。
誤解②:造成工事も解体工事業でできる?
造成は「土木一式」または「とび・土工工事」の範囲であり、解体工事業では行えません。
誤解③:500万円未満なら許可がなくても大丈夫?
金額基準上は可能ですが、元請・ハウスメーカーからの受注は「許可必須」のケースが多く、許可取得のメリットは大きいです。
まとめ:建設プロジェクトのスタートを担う重要工種
解体工事業は、建物の取り壊しから廃材の分別、敷地の再利用準備まで、建設工事の土台を整える重要な工種です。安全管理・法令対応が厳しく求められるため、専門知識と経験が不可欠です。
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