しゅんせつ工事業とは?──河川・港湾・湖沼を守る“水底の整備専門家”

しゅんせつ工事業とは、河川・港湾・湖・ダム・運河などの水底に堆積した土砂や泥を掘削・除去し、水深を確保する工事を担当する専門業種です。水路の安全性、航路の維持、洪水対策、環境保全など、幅広い目的で行われる水中土木の重要工種です。

大型船が安全に航行できる水深の確保、洪水防止のための河川の流下能力改善、湖沼の水質改善など、社会インフラと環境の両面に関わる工事として欠かせません。

しゅんせつ工事業が担当する主な工事

水中での作業が中心となる特殊工事であり、次のような種類があります。

① 河川・湖沼の浚渫(しゅんせつ)

  • 川底に堆積した泥土を取り除き、流れを改善
  • 洪水対策・河川環境の保全

② 港湾・航路の浚渫

  • 大型船舶が通れるよう航路の水深を確保
  • 港の拡張・維持管理に必須

③ ダム・貯水池の堆砂除去

  • 堆砂により貯水容量が減少する問題を解決

④ 汚泥・ヘドロの除去工事

  • 湖・沼・池の水質改善
  • ヘドロ堆積による悪臭・生態系の悪化対策

しゅんせつ工事は“見えない水中”の作業が多く、独自の技術と重機が必要です。

しゅんせつ工事の工程(流れ)

専門船舶や水中機械を用いて、計画的に掘削が行われます。

① 水深測量・調査

ソナー・測量器を使用して水底の地形を確認します。

② 浚渫船の配置

バックホウ浚渫船、ポンプ浚渫船、グラブ浚渫船など状況に応じて選定します。

③ 掘削(しゅんせつ工程)

水底の泥土・砂・礫を掘削し、船上に引き上げます。

④ 土砂の運搬・処分

浚渫土は運搬船で仮置場や処分場へ移送します。

⑤ 仕上げ測量

計画どおりの水深が確保されているか確認します。

水中での作業は天候・潮位に大きく左右されるため、高度な判断力が求められます。

建設業における「しゅんせつ工事業」の位置づけ

しゅんせつ工事業は、水辺の安全性・経済活動・環境保全を支える重要工種です。

  • 防災面:洪水リスクの低減、河川流下能力の向上
  • 交通インフラ:港湾の維持、航路の安全確保
  • 環境改善:水質改善、生態系保全

公共工事の中でも社会的意義が非常に高い分野です。

必要な資格と専門性

  • 浚渫船船長・機関士資格(海技士)
  • 土木施工管理技士
  • 測量士・測量士補
  • 港湾工事の特別教育

船舶運用、水中掘削技術、測量技術など、多分野の専門性を必要とします。

よくある誤解:「川底をさらうだけ」ではない

実際には、浚渫は高度な計画と技術を要する専門工事です。

  • 水中地形の把握には高度な測量技術が必要
  • 掘削機械・浚渫船を使い分ける専門知識
  • 環境対策や濁り抑制の配慮が必須
  • 潮汐・水位・流速の影響を考慮した施工管理

まとめ:水辺の安全と環境を守る“水中土木のプロフェッショナル”

しゅんせつ工事業は、河川・港湾・湖沼などの水底を掘削・除去し、水深確保や環境改善を行う重要な専門工事です。防災・交通・環境の3つの側面から社会を支える不可欠な工種といえます。

高度な重機操作・測量技術・環境配慮が求められる、公共性の高い職種です。