さく井工事業とは、地下水を汲み上げるための井戸(深井戸・浅井戸)や、地盤調査・温泉掘削・地中熱利用ボーリングなど、地中を掘削して井戸管を設置する工事を担当する専門業種です。「さく井(削井)」は文字通り“井戸を削(けず)ってつくる”工事を意味し、古くから続く水源確保の重要技術です。
現代では、工場や農業施設の取水、災害時の非常用井戸、地中熱エネルギー利用、地質調査など、幅広い分野でさく井工事が必要とされています。
さく井工事業が担当する主な工事
① 井戸掘削工事(一般・産業用・防災用)
- 深井戸(数十〜数百メートル)の掘削
- 浅井戸(地下浅層の取水)の掘削
- 揚水ポンプ・井戸管の設置
- 工場用水・農業用水・飲料水設備の整備
② 地質・地盤調査ボーリング
- 建築・土木工事の地盤調査
- 地質サンプル採取
- 地下水位の測定
③ 温泉掘削工事
- 温泉源泉のボーリング
- 温泉施設・宿泊施設での取水設備施工
④ 地中熱利用工事
- 地中熱ヒートポンプ用の採熱井・還元井の施工
- 環境配慮型の空調システムとして需要増加
井戸工事は「水」を得るためだけでなく、地質・エネルギー・環境に関わる幅広い役割を担っています。
さく井工事の工程(流れ)
深井戸やボーリングは専門性が非常に高く、複雑な工程を経て完成します。
① 現地調査・地質確認
地下水脈や地層の硬さを把握し、掘削方法を決定します。
② 掘削(ボーリング)
大型ボーリングマシンで地中を掘削し、削った土砂は泥水とともに排出します。
③ 井戸管(ストレーナー)の設置
地下水を効率的に取り込むために井戸管を挿入し、周囲に砂利を充填してろ過層を形成します。
④ 揚水試験
地下水が安定して供給できるか、揚水量・水位の変化を確認します。
⑤ ポンプ・配管設備の設置
井戸から水を汲み上げ、使用場所に届けるための設備を設置します。
さく井工事は“地下という見えない世界”を扱う工事であり、技術力と経験が品質を左右します。
建設業における「さく井工事業」の位置づけ
さく井工事業は、水資源開発・地質調査・環境エネルギーに関わる極めて専門的な工種です。
- 水資源の確保:工場・農業施設・災害時の取水などに必須
- 建設工事の地盤調査:安全設計に欠かせない基礎データを取得
- エネルギー分野:地中熱利用による省エネ空調の普及
インフラ整備・環境分野の双方で重要な役割を果たします。
必要な資格と専門性
- さく井技能士(1級・2級)
- 地質調査技士
- ボーリングマシン運転技能
- 施工管理技士(建・土・管)
- 揚水ポンプ設備に関する資格
地層・地下水・設備の知識が必要であり、他工種とは異なる高い専門性を持ちます。
よくある誤解:「井戸掘りだけ」ではない
さく井工事は単なる“井戸掘り”ではなく、地質・資源・環境と密接に関わる高度技術です。
- 建物の基礎設計に関わる地盤調査
- 温泉・地中熱利用といったエネルギー分野
- 非常用水源の確保
- 地下構造の専門知識が必須
まとめ:地下資源を安全に活用する専門技術者
さく井工事業は、地下水の取水、地質調査、温泉掘削、地中熱利用など、地中資源を活用するための高度専門工事です。建築・土木に必要な地盤情報の取得から水資源確保まで、幅広い重要な役割を担っています。
今後は環境・エネルギー分野でさらに需要が高まる工種といえるでしょう。

