型枠工事業とは、鉄筋コンクリート(RC)構造物をつくる際に、コンクリートを流し込むための「型」を組み立てる工事を担当する専門業種です。建物の柱・梁・壁・床・基礎など、RC構造のすべては型枠が形状を決定します。つまり、型枠工事は建物の最終的な形・寸法・仕上がりを左右する極めて重要な工程です。
型枠は木材や合板、樹脂パネル、金属パネルなどで作られ、図面通りの寸法精度、剛性、安全性が求められます。設置された鉄筋を囲むように型枠を組み、内部にコンクリートを流し込んで硬化させることで建物の骨格が完成します。
型枠工事業が担当する主な工事
型枠工事は、建築・土木を問わず多くの構造物に必要です。担当する主な工事は以下の通りです。
- 建物の柱・梁・壁・床などの型枠組立
- 基礎・擁壁・耐震壁などの型枠施工
- 土木構造(橋台・カルバート・水路)の型枠
- スラブ型枠(床面)や大梁型枠の施工
- 型枠支保工の設置:型枠を支えるための仮設支え
- コンクリート打設後の型枠解体
型枠はコンクリートの硬化に耐えられる強さが必要であり、施工手順や材料計画が非常に重要です。
型枠工事の工程(流れ)
型枠工事は「図面読解 → 加工 → 組立 → 支保工 → コンクリート打設 → 解体」という流れで行われます。
① 図面の読み取り(施工図・躯体図)
高さ、幅、開口位置など、ミリ単位の情報を正確に把握します。
② 加工(プレカット・現場加工)
木材やパネルを必要寸法に加工し、組立てに備えます。
③ 型枠組立
鉄筋を囲むように型枠を建て込み、剛性を確保しながら図面通りに形を作ります。
④ 支保工(しほこう)の設置
型枠がコンクリートの荷重に耐えられるよう支える構造を設置します。
⑤ コンクリート打設
型枠の強度と寸法精度が要求される最重要工程です。
⑥ 解体作業
コンクリート硬化後、型枠を取り外し、再利用・保管します。
型枠工事は「精度」と「安全性」が品質を左右するため、経験豊富な技能者の役割が大きい工種です。
建設業における「型枠工事業」の位置づけ
型枠工事業は、建築・土木のどちらにも関わる基幹工事であり、特に鉄筋工事・コンクリート工事と密接に関係します。
- 鉄筋工事との連携:鉄筋の位置を確保しながら囲う作業が必要
- コンクリート工事との連携:型枠がなければコンクリートは施工できない
- 建物の寸法精度を決める:建築品質を根本から左右する
RC構造物の品質は、型枠工事の出来栄えに大きく左右されます。
必要な資格と専門性
型枠工事業では、木材加工技術・構造理解・図面読解など多様な専門力が求められるため、資格制度も多岐にわたります。
- 型枠施工技能士(1級・2級)
- 建築施工管理技士(1級・2級)
- 足場の組立て等作業主任者
- 玉掛け技能講習
- コンクリートの基礎知識(打設管理)
特に型枠施工技能士は、技能の高さを証明する国家資格として評価されています。
よくある誤解:「型枠は木工仕事?」ではない
木材を扱うため大工仕事と混同されることがありますが、目的も技術も異なります。
- 大工工事:住宅の木造建築物をつくる
- 型枠工事:RC構造物の形を作るための“仮設型”をつくる
扱う材料・工法・図面・目的がまったく別物であり、型枠工は独立した高度専門職です。
まとめ:建物のかたちと品質を決める重要工事
型枠工事業は、鉄筋コンクリート構造物の形状・寸法・強度を決定づける重要な工種です。精密な図面読解、加工技術、組立技術、安全管理など、多くの専門性を必要とする職種です。
鉄筋工事・コンクリート工事と連携しながら、建物の骨格をつくる“施工の要(かなめ)”として欠かせない存在となっています。

