鉄筋工事業とは、鉄筋コンクリート構造物に使用される鉄筋を加工・組立・配置する工事を担当する専門業種です。建物・橋梁・トンネル・水槽などの構造物は、内部に組まれた鉄筋によって強度と耐震性を確保しています。鉄筋工事は、まさに構造物の“骨格づくり”といえる重要な工程です。
鉄筋は表面にリブ(凸凹)があり、コンクリートとの付着力を高めるための特殊構造を持っています。この鉄筋を正確な位置に配置し、設計通りの強度を発揮させることが鉄筋工の役割です。寸法精度、結束技術、安全管理など、極めて専門性の高い工事として知られています。
鉄筋工事業が担当する主な工事
鉄筋工事業は、建築・土木のあらゆる鉄筋コンクリート構造物に関わります。代表的な工事は以下の通りです。
- 基礎鉄筋工事:住宅・ビルなど建築物の基礎部分の鉄筋組立
- 柱・梁・壁の鉄筋工事:建物の構造体となる鉄筋配置
- スラブ(床)鉄筋工事:床面の耐荷重を支える鉄筋補強
- 橋梁・トンネルなど土木構造物の鉄筋工
- 大型タンク・水槽・プールなどの鉄筋組立
- 鉄筋のプレハブ加工(工場加工)
鉄筋工事は構造物の耐震性を決定づける工程であり、施工ミスは重大な欠陥につながるため高い精度が求められます。
鉄筋工事の工程(流れ)
鉄筋工事は図面(配筋図)に基づいて、正しい位置・本数・間隔で鉄筋を組み立てていく作業です。
① 加工
鉄筋を所定の長さに切断し、曲げ加工機で形状を整えます。
② 組立
鉄筋を現場に搬入し、配筋図に従って組み立てます。スペーサーや結束線を使い、寸法を厳密に確保します。
③ 結束
ハッカー(専用工具)で鉄筋を結束し、形が崩れないよう固定します。
④ 検査
コンクリートを打設する前に、配筋の検査を実施。寸法・本数・間隔・かぶり厚などを確認します。
この工程が完了して初めて、コンクリートの打設が可能になります。
鉄筋はなぜ重要なのか?
鉄筋とコンクリートは「最強の組み合わせ」と呼ばれます。理由は以下の通りです。
- コンクリート:圧縮力に強いが、引張力に弱い
- 鉄筋:引張力に強いが、圧縮力にも十分耐える
この2つを組み合わせることで、巨大な力にも耐えられる強固な構造物が生まれます。耐震大国である日本において、鉄筋工事は建設業の中でも特に重要な位置づけです。
必要な資格と専門性
鉄筋工事は高度な専門技能と安全管理が求められるため、多くの資格があります。
- 鉄筋施工技能士(1級・2級)
- 登録鉄筋基幹技能者(現場管理の中心となる資格)
- 玉掛け技能講習
- ガス圧接工資格:鉄筋同士を一体化させる特殊技術
- 鉄筋施工管理技士(民間資格)
特にガス圧接は構造強度に直結するため、厳しい資格制度が設けられています。
建設業における「鉄筋工事業」の位置づけ
鉄筋工事業は、建築と土木の両分野で必要とされる基幹工事です。建物の構造体はほぼすべて鉄筋コンクリートで構成されているため、需要がなくなることのない安定した業種です。
- 高層ビル・マンションの構造体
- 公共インフラ(橋梁・トンネル・水路)
- 耐震補強工事
また、近年はプレハブ加工(工場加工)により現場の省力化が進み、施工管理・加工技術の両面で専門性が求められています。
よくある誤解:「鉄筋工=肉体労働」ではない
実際には、図面を読み解く能力・数値管理・安全管理・技術判断など、多くのスキルが必要です。
- 配筋図の理解力
- ミリ単位の寸法精度
- 結束位置の判断
- 構造体の力学理解
経験値が品質を大きく左右する工種であり、熟練度がそのまま施工品質に直結します。
まとめ:建築物の強度を決定づける“構造の心臓部”
鉄筋工事業は、建物や橋梁などの構造物の強度と耐震性を担う極めて重要な工事です。加工・組立・結束・圧接など専門技術を駆使し、コンクリート構造物の安全性を支えています。
建設業の中でも基幹的な工種であり、今後も高い需要が続く安定した専門職として注目されています。

