水道施設工事業とは、ダム・取水施設・浄水場・配水池・送配水管といった「上水道施設」の建設・更新・維持管理を行う工事業種です。私たちが毎日安心して水道水を使えるのは、この工事業が高度な技術で水の供給システムを支えているためです。
上水道は「命のインフラ」と呼ばれ、社会生活に欠かせない基盤です。水道施設工事は水源から家庭まで安全で清潔な水が届くよう、水質管理・衛生確保・耐震性向上などに直接関わる極めて重要な工種です。
水道施設工事業が担当する主な工事
水道施設工事業は、一般的な土木工事とは異なり、水質を守るための衛生管理・高度な設備技術・大型構造物の施工など専門性の高い作業を含みます。
- 取水施設の工事:河川・ダム・井戸から安全に水を取り込む設備
- 浄水場の建設・機器設置:ろ過・沈殿・消毒など水を飲める状態にする施設
- 配水池の新設・更新:地域への水の安定供給を担う貯水施設
- 送水・配水管工事:大口径管の設置・更新・耐震化
- 水道施設の耐震補強:災害時の断水リスクを減らす工事
- ポンプ設備・薬品設備の更新工事:水処理に欠かせない設備機器の設置
特に近年は老朽化が進む水道インフラの更新が急務となっており、需要が高まっている工種です。
水道施設の流れ(仕組み)を理解すると工事がわかりやすい
水道施設工事業は、水源から蛇口まで続く「水の流れ」をつくる仕事です。
① 取水施設
川やダムから水を取り込む設備。ポンプや取水堰などを設置します。
② 浄水場
沈殿・ろ過・消毒など複数の工程で安全な水に処理します。
③ 配水池
処理した水を一時貯め、地域全体に安定供給するタンク。
④ 送配水管
配水池から各家庭・施設まで水を届ける管路。地中に張り巡らされています。
この一連の流れのどこに問題が生じても断水に直結するため、水道施設工事には高度な精度と確実な施工が求められます。
建設業における「水道施設工事業」の立ち位置
水道施設工事業は、建設業29業種の中でも「水道の浄化・供給」に特化した専門工事です。他の土木工事業(道路・河川など)とは異なり、水質管理や衛生面での厳しい基準が設けられています。
- 生活インフラを支える公共性の高い工事
- 専門設備や機械が多く、経験者の価値が高い
- 人口減少による施設統廃合や更新需要が増加中
災害対策として耐震化工事が増加している点も特徴です。
必要な資格と専門性
水道施設工事では、構造物の施工管理と設備機器の両方を扱うため、幅広い資格が求められます。
- 1級・2級土木施工管理技士
- 1級・2級管工事施工管理技士
- 水道技術管理者(水質管理に関連)
- 水道施設点検の専門知識
- 塩ビ管施工・鋳鉄管施工の技能
特に近年は大口径管の更新や耐震管への交換が進んでおり、専門知識を持つ技術者の需要は高まっています。
よくある誤解:「水道施設工事=水道屋さん」ではない
水道屋=給排水設備の配管工事と誤解されがちですが、全く別の工事種目です。
- 水道施設工事業:上水道施設、浄水場、配水池、大口径管など公共工事中心
- 管工事業:建物内の給排水設備工事(住宅・ビル)
同じ「水」に関わる工事でも、規模・目的・技術が大きく異なります。
まとめ:人々の生活を支える“命のインフラ工事”
水道施設工事業は、安全な水を地域に安定供給するための重要なインフラ整備工事です。取水施設から浄水場、配水池、送配水管まで、水の流れ全体を支える高度な技術を必要とする専門職です。
老朽化施設の更新や耐震化のニーズも高まり、今後さらに需要が拡大することが予測される工種のひとつと言えるでしょう。

