建設業許可の「500万円証明」で最も使用されるのが、銀行から発行される残高証明書です。 残高証明はシンプルに見えますが、取得方法や日付の扱い、口座名義などで不備が起こりやすく、差し戻しの多い書類でもあります。
本記事では、残高証明の正しい取得方法、提出時の注意点、よくある否認事例、ネット銀行利用時の扱い、発行タイミングなど、実務ですぐに使える情報を徹底解説します。
残高証明とは?──銀行が発行する「預金額の公式証明書」
残高証明書とは、銀行が「申請時点で口座にある預金額」を証明する書類のことです。 建設業許可では、この残高が500万円以上であれば財産要件を満たします。
法人の場合は会社名義の口座、個人事業主の場合は代表個人の名義で発行します。
残高証明の基本ルール
- 証明日は申請日の直近であること(1ヶ月以内が一般的)
- 銀行・信用金庫・ネット銀行で取得可能
- 普通預金・当座・定期預金も合算可能
- 複数口座の合算も認められる(自治体により扱いが異なる)
もっとも審査がスムーズに通る証明方法です。
残高証明の取得方法(銀行別の実務フロー)
残高証明の取得方法は銀行ごとに異なりますが、一般的には以下の3つの方法があります。
① 店舗窓口で申し込む(もっとも確実)
口座を持っている支店で、残高証明書の発行依頼を行います。
必要なもの
- 届出印
- 本人確認書類
- 発行手数料(500円〜1,100円)
発行日数の目安
当日〜3営業日が一般的です。
② インターネットバンキングから申請する(銀行によって対応)
楽天銀行・住信SBI・三井住友など、多くの銀行はオンラインで残高証明を申請できます。
紙の証明書が郵送されるほか、PDFをダウンロードできる銀行もあります(自治体によってPDF可否が異なる)。
③ コールセンターに電話して申請する
店舗が遠い場合や法人窓口が混雑する場合は電話申込が可能です。
ただし、書類は郵送のため発行に時間がかかります。
残高証明の取得時に指定できる内容
銀行の残高証明は、次の項目を指定できます。
- 証明日(◯年◯月◯日時点)
- 証明する口座(普通・定期など)
- 証明が必要な金額(一般は口座残高)
- 取引期間を指定するタイプの証明(自治体では不要)
建設業許可で使用する場合は、 「指定日残高証明」を選択します。
残高証明でよくある不備・否認事例
残高証明は一見シンプルですが、意外と不備や否認が多い書類です。
① 証明日が古すぎる
1ヶ月以上前では無効とされる自治体が多いです。
② 口座名義が会社名と一致していない
法人申請なのに個人口座で証明するのは不可。
③ 通帳コピーを提出している
残高証明とは別物。正式な銀行証明が必要です。
④ ネット銀行のPDFを印刷したものが不可の場合
自治体によっては「銀行発行の原本」を求めることがあります。
⑤ 見せ金と疑われるケース
短期借入で一時的に残高を作ることは禁止されており、審査で発覚すると否認されます。
ネット銀行での残高証明は有効?
楽天銀行・住信SBI・PayPay銀行など、ネット銀行の残高証明も多くの自治体で認められています。
ただし注意点として、
- PDF形式は不可 → 原本郵送が必要な場合あり
- 証明書に銀行印が印字されない場合 → 追加資料が必要な自治体も
事前に自治体へ確認することを推奨します。
500万円を複数口座で合算しても良い?
可能です。ただし、自治体によって扱いが異なります。
- 銀行ごとに残高証明を出す必要がある
- 合計で500万円を超えればOK
もっともスムーズなのは、1つの口座で500万円以上を証明する方法です。
残高証明を取得するベストタイミング
残高証明は「提出日から1ヶ月以内」が原則のため、申請日の直前で取得する必要があります。
おすすめのタイミングは、 申請予定日の3〜7日前です。
残高証明が500万円を下回っている場合の対策
残高が足りない場合は次の方法があります。
① 融資枠で証明する
銀行の極度額証明書で代替可能。
② 一時的な資金移動はNG(見せ金)
審査で発覚すると大きな問題になります。
③ 決算書の自己資本で証明する
黒字企業はこの方法がもっともスムーズです。
④ 親族・経営者からの増資
資本金を増やして自己資本を増やす方法。
まとめ:残高証明は「名義・日付・原本」が重要
残高証明は建設業許可の財産要件で最も使われる方法ですが、次のポイントで不備が起こりやすいため注意が必要です。
- 証明日は1ヶ月以内のものにする
- 法人は法人名義の口座で取得する
- ネット銀行のPDFは原本扱いか要確認
- 見せ金は絶対にNG
正しい手順で取得すれば、財産要件はスムーズにクリアできます。


