建設業許可で「専任技術者(専技)」を配置する際、最も誤解されやすく不備が起きやすいのが“常勤性”です。専技は、営業所に常勤していなければならず、実態がなければ許可は認められません。
本記事では、専技の常勤性を証明するための方法を、社会保険・給与・勤務地を中心に具体的に解説し、審査で否認される典型例や、名義貸しと疑われないための注意点まで網羅します。
専任技術者の常勤性とは?
常勤性とは「専技がその営業所に日常的に勤務し、技術上の管理を行える状況にあること」。
つまり、次のような状態である必要があります。
- 営業所で通常勤務している
- 他社での常勤勤務や役員業務と兼務していない
- 勤務実態を示す証拠がある
専技は“名義貸し”が問題になりやすいため、自治体は常勤性を厳しくチェックします。
常勤性を証明するために使える資料一覧
専技の常勤性を示す資料は、主に次の3つです。
① 社会保険加入記録(健康保険・厚生年金・雇用保険)
もっとも信頼度が高い資料。専技が「その会社に常勤している」と証明できます。
② 給与台帳・賃金台帳
毎月給与が支払われている記録。勤務実態の証拠として使用されます。
③ 雇用契約書・就業規則
勤務条件・勤務地が明確であることを示すために必要。
補足資料として有効なもの
- 出勤記録・勤怠管理データ
- 住民票(自宅住所と営業所の距離確認用)
- 会社の組織図
- 会社の名刺・メールアドレス
自治体ごとに求められる資料は微妙に異なるため、事前確認が重要です。
常勤性が認められない典型例
以下のケースは審査で否認される可能性が非常に高いです。
① 他社で常勤している(雇用・役員)
専技は複数社で常勤することはできません。
② 社会保険未加入で常勤性が証明できない
社会保険加入がない場合「勤務実態がない」と判断されることが多いです。
③ 現場に常駐しており営業所に不在
現場代理人を兼任できる場合もありますが、常勤性が担保されている必要があります。
④ 住所が遠方で通勤が非現実的
片道2〜3時間以上の距離は、常勤と認められない可能性があります。
⑤ 親族会社の名義貸しと疑われるケース
実態がない場合は審査に通りません。
“社会保険に入っていない場合”の対処法
小規模事業者では、社会保険未加入で審査に困るケースが多くあります。 その場合、次の資料で補完できる場合があります。
- 給与台帳
- 源泉徴収票
- 雇用契約書
- 勤怠データ
自治体によって判断は異なりますが、複数資料を組み合わせることで認められるケースもあります。
専技が他社の役員・従業員を兼務している場合
専技は原則として兼務不可ですが、例外的に次のケースは認められる可能性があります。
- 兼務先が“非常勤”であり、それを証明できる
- 兼務先に実態のない名義上の役員である
いずれの場合も「常勤は自社である」ことを証明する資料が必要です。
常勤性と現場代理人の兼任について
専技が現場代理人を兼任する場合、以下が審査されます。
- 営業所に常勤できているか
- 移動距離や移動時間は合理的か
- 業務量が過剰でないか
現場が遠方の場合は兼任が認められないことがあります。
専技の常勤性を証明するための実務的な準備
① 労働条件通知書で勤務地を明記する
「勤務地:○○営業所」と記載されていることが重要。
② 勤怠管理システムを活用する
出勤記録が提出できるように準備しておく。
③ 社会保険加入は必須レベルで対応する
最も審査がスムーズになります。
④ 営業所の実体を整える
- 机・電話・パソコン・看板などがあるか
- 登記住所・営業所住所が一致しているか
営業所が形式だけだと常勤性が疑われます。
常勤性の否認を避けるための注意点
- 非常勤役員は専技にできない自治体もある
- 自宅を営業所にしている場合は特に注意
- 遠方の専技配置は避ける
- 社会保険未加入は最も否認リスクが高い
まとめ:専技の常勤性は許可審査の重要ポイント
専任技術者は「技術の責任者」として営業所に常勤していることが前提です。審査では社会保険・給与台帳・雇用契約書など複数資料で証明する必要があります。
名義貸しと疑われないよう、勤務実態がわかる資料をしっかり準備することが許可取得の近道です。


