建設業許可を取得する際、最も重要といわれる要件が「経営業務管理責任者(経管)の経験証明」です。経管になれるだけの経験があっても、それを書類で証明できなければ、審査で認められません。
本記事では、経管の経験を証明するための資料の種類、集め方、自治体審査で差し戻されやすいポイントなど、実務に沿ってわかりやすく整理して解説します。
経管の経験証明は“書類が命”──経験があっても証明できなければ不合格
建設業許可の審査では、実際に経営経験があるかどうかを「書類」で確認します。 つまり、どれだけ実績や経験があっても、書面で証明できなければ経管として認められません。
審査担当者は、次のポイントを重視します。
- 経験期間(○年○ヶ月)が明確にわかるか
- 建設業に従事していたことが客観的に確認できるか
- 経営に関わる立場であったことが示せるか
そのため、証明資料を“体系的に”集めることが非常に重要です。
経管の経験証明に使える資料一覧(これさえ揃えばOK)
以下は、自治体が認める代表的な証明資料です。
① 役員としての経験を証明する資料
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書):役員就任〜退任の期間が明確にわかる
- 議事録・辞令:役員就任の裏付け
- 会社の工事請負契約書:建設業であることの証拠
- 請求書・注文書:実際に建設工事を行っていた証拠
登記が最重要ですが、それだけでは「業務内容」がわからないため、工事資料もセットで提出します。
② 個人事業主としての経験を証明する資料
- 確定申告書(控):事業内容が“建設業”となっていることが必須
- 収支内訳書
- 請求書・見積書・注文書
- 工事写真(施工前・施工後)
- 取引先との契約書
個人事業主は「建設業を営んでいた証拠」がより厳密に求められます。
③ 管理職(支店長・営業所長)としての経験資料
- 在籍期間がわかる社会保険加入記録
- 辞令・役職辞令
- 業務内容がわかる内部資料(職務分掌など)
- 工事契約書・請求書(事業所として関与した工事の証拠)
役職にふさわしい業務内容を行っていたことを証明できるかが重要です。
経験証明資料の“集め方“を具体的に解説
① まず「経歴の棚卸し」を行う
以下を箇条書きで整理します。
- いつ(年・月)から建設業に関わったか
- どの会社で何をしていたか
- 役職はどう変わったか
- 工事規模はどの程度か
この棚卸しにより「どの資料が必要か」が明確になります。
② 工事資料を整理し、提出用にまとめる
契約書・請求書は次の項目が明確にわかるものが有効です。
- 工事の内容
- 施主名
- 工期
- 金額
- 請負人名(自社名)
最低でも「1年あたり1〜2件」程度の資料は求められます。
③ 証拠資料が不足している場合の対処法
- 発注者に再発行を依頼する
- 工事写真で補強する
- 取引先に証明書を書いてもらう
- 税理士に証明書を作成してもらう
資料不足は審査で最も多い不備ポイントなので、可能な限り補強が必要です。
自治体審査で“差し戻される資料”の特徴
- 建設業以外の仕事の資料(対象外)
- 注文書だけ・請求書だけで工事内容がわからない
- 工事の時期が経歴と合わない
- 登記の役員期間と資料が一致しない
- 資料の名義が本人と一致しない
審査では“整合性”が最重要視されます。
経験証明の提出方法と注意点
提出する書類は自治体によって微妙に異なりますが、基本は次の流れです。
- 提出資料を一覧表にまとめる
- 契約書・請求書は時系列に並べる
- 匿名加工されていない資料を提出する
- 明らかに関係のない資料は除外する
自治体によっては「写し」で提出し、審査中に追加資料を求められる場合もあります。
経験証明でよくあるトラブルと解決策
ケース1:資料がほとんど残っていない
工事写真+取引先証明+税理士証明で補強可能。
ケース2:役員期間と資料が一致しない
登記簿の取得時期を確認し、必要に応じて補足説明を添付。
ケース3:工事資料が相手方の名義になっている
補助資料として扱われるため、追加で本人側の資料が必要。
まとめ:経管の経験証明は「資料の質と量」が合格の決め手
経管は建設業許可の最重要要件であり、経験の証明が不十分だと許可は認められません。本記事で紹介した資料を確実に揃えることで、審査をスムーズに進めることができます。


