建設業許可の審査において、「社会保険への加入状況」は必ずチェックされる重要な項目です。 建設業法上、社会保険未加入は明確な欠格要件には該当しません。しかし現実には、社会保険未加入の事業者は「誠実性に欠ける」と判断され、不許可や強い指導の対象となります。
本記事では、社会保険加入がなぜ誠実性と結びついているのか、どこまで加入が必要なのか、専任技術者・経営業務管理責任者への影響、未加入企業が取るべき対策などを実務目線で徹底解説します。
なぜ社会保険加入が誠実性と関係しているのか?
建設業界では、社会保険未加入問題が長年の課題とされてきました。 未加入のまま事業を続けることは、次のような問題を引き起こします。
- 労働者保護の欠如
- 適正な賃金・雇用の確保が困難になる
- 法令遵守の姿勢が疑われる
- 競争環境の不公平を生む
そのため、国土交通省は「社会保険未加入事業者を公共工事から排除する」方針を打ち出しており、民間工事でも未加入企業は敬遠される傾向があります。
この背景から、建設業許可の審査では社会保険加入状況が誠実性の重要指標として扱われています。
建設業許可で確認される社会保険とは?
許可審査でチェックされる社会保険は次の3つです。
① 健康保険(協会けんぽまたは組合保険)
② 厚生年金保険
③ 雇用保険(事業主と従業員が加入)
法人であれば必ず加入義務があります。 個人事業主は従業員がいる場合に加入義務が生じます。
社会保険未加入は欠格要件ではないが“不許可リスク”が高い
社会保険未加入は法律上の欠格要件ではありません。しかし審査実務では、次のような理由で許可取得が難しくなります。
① 法令違反の状態にあるため、誠実性に問題がある
建設業法は法令遵守を特に重視しています。
② 専任技術者・経管の常勤性を証明できない
社会保険加入状況が常勤性の判断材料になります。
③ 行政の「指導」の対象となり、加入が強制される
加入後でないと許可が下りないケースが多い。
社会保険加入が「専任技術者の常勤性」に与える影響
専任技術者は事業所に常勤していることが必須です。 常勤性の証明として次の資料が使われます。
- 社会保険加入状況
- 給与台帳
- 雇用契約書
- 勤怠記録
もし専任技術者が社会保険に加入していない場合、 「本当にこの会社の常勤なのか?」 と疑われ、審査が通らなくなることがあります。
社会保険加入が「経営業務管理責任者」にも影響する理由
経営業務管理責任者も常勤性が求められるため、社会保険加入は重要な確認ポイントです。
外部の名義だけ借りているケース(名義貸し)が多いため、社会保険加入状況は実態を確認する重要な材料になっています。
社会保険未加入で起きる現実的なデメリット
- 許可審査で強制的に加入させられる
- 更新時に不許可となるリスク
- 元請からの受注停止
- 公共工事の参入不可
- 労災事故時の大きな責任
社会保険未加入は、許可だけでなく事業全体に大きな影響を及ぼします。
社会保険加入のチェックはどのように行われるか?
自治体は社会保険加入について、次のような方法で確認します。
① 健康保険証の種別(協会けんぽ・組合)
② 賃金台帳の提出
③ 雇用保険被保険者資格取得届の写し
④ 労働保険の年度更新書類
提出書類に不整合があると、追加提出を求められます。
個人事業主の場合の社会保険はどう扱われる?
個人は社会保険(健康保険・年金)は任意加入ですが、従業員を雇っている場合は雇用保険と労災保険の加入が必須です。
そのため、個人事業主であっても従業員を使っている場合は、未加入だと強い指導が入ります。
社会保険未加入企業が許可を取るためのステップ
未加入のままでは許可が下りないことが多いため、以下の手順で加入を進めます。
① 加入義務のある保険を確認
法人は健康保険・厚生年金・雇用保険の加入が必要。
② 社会保険労務士に加入手続きを依頼
自力でも可能ですが、専門家の方が速く確実です。
③ 保険証・基礎年金番号が揃ったら申請準備へ
証明書類を揃え、許可申請に進みます。
社会保険は「誠実性」を示す最も重要な要素のひとつ
社会保険加入は建設業許可の誠実性を判断するうえで不可欠な要素です。
- 実態のある雇用関係の証明
- 法令遵守の姿勢
- 労働者保護の徹底
これらが揃って初めて、許可行政は事業者を「誠実に運営できる会社」と判断します。
まとめ:社会保険加入は事業の信用を確立するために必須
社会保険加入は欠格要件ではないものの、建設業許可の審査において実質的に必須となっています。
- 社会保険未加入は誠実性に欠けると判断される
- 経管・専技の常勤性が証明できなくなる
- 加入しないと許可取得が非常に難しい
- 元請や公共工事から排除されるリスクがある
適切に加入し、法令遵守の体制を整えることが、建設業許可取得への第一歩です。


